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12/22(土)16:30- マカオより来日アーティストと交流パーティ

2018.12.14

https://www.facebook.com/events/2178487545805809/

はじめに

虚無からのこだま

すでに私が版画を通して美術教育に携わり30年の月日が流れようとしています。その間、大変多くの興味深い人々との出会いがあり、それにともなう多くの出来事があり、また支えられ、私はこの仕事を続けることができました。
日々の制作において、私はさまざまな版種のなかでも特に金属板への腐食、エッチングを永く好んで作ってきました。製版作業を通してなにが起こるか予想できないこの技法に惹かれたからです。ときに私たちは下絵に忠実に作品を仕上げることに心血を注ぎます。しかし多くの場合、エッチングではコントロールしないことによって多様な効果を引き起こすことができるのです。説明のできない化学反応によって生み出される不思議な画面を、私は愛し、またその結果を憎むこともありました。一度起きた工程は再び繰り返されることはありません。それはまるで私たちの人生の持つ「不思議」と重ねられるようです。

黄穎祥。彼に初めて会った時、疑いなく私は複雑な心境に陥りました。事実、彼が私の工房の戸をたたき、才能ある生徒として迎い入れられたのは高校生最後の年でした。しかし彼はそこから英国ロンドン大学ゴールドスミス校への留学を望んでいました。黄の性格といえば、やる気のなさそうな、笑いもせず、とはいえ勤勉であり、短期間で優れた作品を仕上げることができる才能を持った青年でした。イギリスでの大学の面接試験でもろくに英語が話せなかったのに彼は合格を果たし、当時の講師曰く、「黄はまるで不思議を描いた白い紙のようだった」と述回していました。
英国留学を終え、今回展示される黄の一連の銅版画作品は疑うことなく人の踏み入れられない空間、まさに「雲 生まれ、消えゆくところ」としてあらわされたものです。彼の作品の雲は、それを見る者へ忍耐を促しつつも感性の天上で共有されることを意図しています。「大美無言」、大美は言葉を語らず。
皆様に黄穎祥からの「虚無」の声をぜひ聞いていただきたいと願っております。

王 禎寶

and follow is the artist introduction in Japanese..

雲 生まれ、消えゆくところ

本展覧会で私の出品する作品の画面は、冷たい無機的な線によって分割されています。この線は背景にある虚無的な形態を有する雲を貫き、かろうじて観る者に認識される状態を保っています。

雲とは事実、大きな水蒸気の塊であり、私はこの制御不能な形態を使って、画中の無機的なオブジェとの間に相互作用を引き起こさせます。これによって画面の構成と配置された無機物のあいだに微弱な振動が生まれてくるのです。

しかしそれはしばらくしないうちに画面から消え、ややもすると雲さえそこに残ることが選択できなくなってしまいます。私はそれらの無機的オブジェをただのなにもない空間に配することは考えませんでした。今回、私の作品を観ていただく皆様には、雲と空間のはざまで引き起こされる生成と消失のはかないひとときを、ともに感じていただければと願っております。

黄 穎祥

■12月22日(土)16時30分~アーティストを囲んでの来日交流パーティを開催いたします。ご興味のある方は是非お気軽にご参加くださいませ。